苦労乗り越え　働く幸せ　　きょう勤労感謝の日：フィギュア大好きっ子の趣味の部屋：SSブログ

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苦労乗り越え　働く幸せ　　きょう勤労感謝の日　[勤労感謝の日] [編集]

国民の祝日に関する法律（１９４８年施行）は、勤労を尊び、生産を祝い、国民が互いに感謝しあう、と定めている。２３日は勤労感謝の日。懸命に働く３人を取材した。

　　　■倒産、借金、病…　不屈の７４歳

　さいたま市岩槻区の小林壮平さん（７４）宅。２階作業場で、妻初子さん（６２）と一つひとつ、ファンシーフラワー（造花）を手作りしていく。携帯ストラップから贈答品まで様々な需要があるという。笑みを絶やさず働く２人だが、倒産と起業を繰り返した壮絶な経験を持つ。

妻初子さん（右）の手作業を見守る小林さん（さいたま市岩槻区で）　小林さんは２７歳で独立し、トランジスターの輸出などを手がけた。日本がオリンピックを翌年に控えた１９６３年。しかし、業績不振に陥って倒産。再度の起業後も事業展開に失敗し、巨額の負債を抱えた。

　借金の取り立てから逃れるように向かった大阪市で、百貨店に勤めていた初子さんと出会った。初子さんが得意だった造花のアクセサリーで商売を始めたものの、再び借金で身動きができなくなった。

　鴻巣市に移り住み、お好み焼き店を開業。県内外に５店舗を経営するまでになったが、またツキから見放された。連帯保証人になった知人の会社が倒産した。１０年ほど前のことだ。

　過労で倒れた。肺血腫、前立腺肥大、高血圧も重なり、５メートルも歩けない体になった。生活保護を受けた。「もうだめか」としょげることもあったが、「このまま終わってたまるか」との思いだけが、毎日２時間の歩行リハビリに向かわせた。

　回復するとすぐ、仕事を探した。初子さんと一緒にできる造花しかない、と考えた。利益は多くはないが、機械化が難しく、企業にはできない仕事だ。

　「あきらめたら浮上するチャンスなんてない。志さえ持っていればいい」。小林さんは働くことが楽しくてしかたがない。商品は４年前、県の「彩の国優良ブランド品」に認定された。

　　　■障害持つ私だから　人を癒やす仕事に

　川越市かすみ野の関純子さん（４０）は、脳腫瘍(しゅよう)が原因で１歳半から光を見ていない。小学校から高校まで特別支援学校に通い、全盲のハンデも、差別も、十分に理解して育った。

ヘルスキーパーとして忙しい毎日を送る関さん（東京・千代田区で）　「同じ境遇の子どもたちに英語を教えたい」と、上尾市の女子聖学院短大（現・聖学院大）と和光大に通い、中学、高校の教員免許を取得したが、採用試験に２年連続で落ち、民間企業の内定ももらえなかった。

　２９歳で英会話学校の事務職に採用された。「やっと働ける」。文章を読み上げるパソコンソフトのおかげで仕事は順調だった。予期しなかったのは会社の業績悪化だった。３０人いた同僚は６人に。がむしゃらに働いた結果、体調を崩し、入社６年で退職した。

　関さんはその後、３年かけて資格を取り、現在は、東京・内幸町の「新日本有限責任監査法人」でヘルスキーパー（企業内理療師）として働く。スタッフにマッサージを施し、健康管理も担う忙しい毎日だ。

　ストレスで退職を余儀なくされても「やっぱり働きたい」と思った。社会とつながりたい。障害がある自分にできることを、と。見つけた答えがヘルスキーパーだった。「働く人たちがどれほど疲れているか分かっていたから」

　　　■一念発起　施設経営　　お年寄りに笑顔を

　神川町元阿保の農村地帯にある「ありの実デイサービス」は、山本由佳さん（３７）が２００７年に始めた高齢者介護施設だ。

笑顔で施設を切り盛りする山本さん（神川町元阿保で）　ボランティアに熱心な母親を見て育った。２０歳で結婚、２人の子どもを育てながら、大手の介護施設で働いた。しかし「高齢者の話を聞いてあげることさえできない」と感じていた。

　夫を説得し、施設経営を始めたが、簡単ではなかった。書類の処理に忙殺される一方、資金繰りに困り、居酒屋でアルバイトしたこともある。軌道に乗りかけた０９年３月には、車で出勤途中、事故に遭った。脳挫傷とくも膜下出血で、今も右半身にしびれが残る。それでも「貴重な体験だった」と山本さんは言う。「体が不自由な高齢者が介護する人に何を求めているか、気づくことができたから」

　乱れた髪、暗い表情で入所してくる高齢者。「面倒かけるばかりで」とうなだれる人も多い。寂しい思いをしてきた彼らに必要なのは「笑顔」だ。どんなにつらくても「笑顔」だ。

　以来、スタッフにも徹底させた。施設はみるみる明るくなった。「身なりが良くなった」「会話が増えた」。入所者の家族との連絡帳に書かれた言葉に目を細める。「たくさん働いてきた人に、居心地のいいところでのんびり過ごしてもらう。お年寄りを大切にするこの仕事は、未来の自分を大切にする仕事」。山本さんは笑顔で話した。